皮脂が毛成長と関係があると考えられている理由の一つに脂漏性皮膚炎があります。この皮膚炎は皮脂の多いところに出現しやすいのです。
どんな症状がでるのか、「脂漏性皮膚炎」と入れてグーグルで画像検索してみてください。ああ、あんな感じかとお分かりになると思います。
脂漏性皮膚炎の原因
脂漏性皮膚炎の原因は、カビの仲間であるマラセチア菌によるものです。ただ、マラセチア菌は皮膚に普通に棲んでいる常在菌です。
Malasseziaと脂漏性皮膚炎・アトピー性皮膚炎によると、頭皮に発生した場合はこのようになるようです。
頭皮に脂漏性皮膚炎が生じると,びまん性に黄色の落屑と紅斑を生じ, 掻痒を伴うことが多い.
びまん性とは、病変がはっきりと限定することができずに広範囲に広がっている状態のことです。落屑はフケのことです。紅斑は赤くなること。掻痒はかゆみです。
どのように起きるのか
常在菌は、本来、体に危害を加えないのです。なぜ常在菌のマラセチア菌が皮膚病を起こすのか、その実際の原因はよく分かっていないそうです。
しかし、マラセチア菌がどのように症状を起こすのか次のように説明されていました。
発生機序としては,脂質要求性のMalassezia菌体が産生するリパーゼが,皮脂を遊離脂肪酸に分解し,分解された遊離脂肪酸が起炎性を示す.また,菌体は補体を活性化し接触過敏を引き起こす.病変部の菌の増殖によつて菌体や菌が分泌する物質が増加し,結果的に表皮の炎症や増殖(turn overの亢進)を引き起こすと考えられる.
脂肪を分解
マラセチア菌が脂肪を分解するリパーゼを出して、皮脂の脂肪を分解、グリセリンと遊離脂肪酸にします。分解された遊離脂肪酸が炎症の原因になります。
また、補体とは、抗体の機能を補助、あるいは補完するたんぱく質である。20以上のタンパク質が関与し、抗体による病原体殺滅を補強する能力をもつ、という意味で名づけられました。(出典)
つまり、マラセチア菌が、免疫反応の抗体を助ける補体を活性化するので、マラセチア菌は「異物」として、抗体から攻撃されます。その結果、アレルギー反応のような炎症や赤くなるなどの反応を起こすのでしょう。
ターンオーバーが早まると毛髪サイクルが短くなり、太くて長い毛が生えなくなります。さらに、頭皮に炎症が起きると脱毛しやすくなります。
マラセチア菌が脂肪を分解して増えていくので、皮脂が多いとマラセチア菌が増殖するために好適な条件になります。
頭皮の脂を取った方が毛髪によいのだという話は、脂漏性皮膚炎による脱毛から出て来た話なのでしょう。
薄毛の科学にはこんな話がでていました。
しばしば、男性型脱毛症に合併する脂漏性皮膚炎には、皮脂が病因的に関わっています。
さらに、最近行われた92組の男性型脱毛症を有する双子の研究では、双子のうち頭皮のフケがある方が、男性型脱毛症が重症化していることがわかりました。(中略)
もし男性型脱毛症における頭皮ケアの役割を考えるならば、この男性型脱毛症と脂漏性皮膚炎の接点に焦点を当てたものになるのではないでしょうか。
脂漏性皮膚炎の治療
Malasseziaと脂漏性皮膚炎・アトピー性皮膚炎は2005年に書かれた論文です。脂漏性皮膚炎の治療に関して、皮膚科を検索して調べてみたら、先生によって治療の方針は違います。
最初から外用ステロイド剤を使う先生もいらっしゃいます。
治療は,外用ステロイド剤や非ステロイド系消炎外用薬が汎用されていたが,最近ではMalasseziaの関与が注目されており,抗真菌薬である2%ケトコナゾールクリームによる治療が主流になりつつある.
ステロイド外用薬は2%ケトコナゾールクリーム外用に比べ速効性があるが,中止後に再燃しやすい.一方,2%ケトコナゾール外用では中止後も再燃までの日数が長く,また副作用も少ないと報告されている.
抗真菌薬とは細菌ではなく、真菌を殺す薬です。真菌の仲間には酵母、カビ、水虫などが知られています。
2%ケトコナゾール外用というのがよいらしいです。
脂漏性皮膚炎の頭皮ケア
もし、頭皮が脂漏性皮膚炎と診断されると、皮脂をきれいにするよう洗髪を指示されるようです。ケトコナゾール配合のシャンプーも販売されているようですが、この記事ではリンクを貼りません。
まず、気になったら皮膚科を受診すること。その上でマラセチア菌が原因だと分かったら、薬を処方してもらい、どんなシャンプーを使ったらよいか先生と相談してください。
それが一番よい方法だと思います。
まとめ
常在菌であるマラセチア菌がなんらかの理由で、脂漏性皮膚炎の原因となるそうです。常在菌が問題になるのは、体の抵抗力が落ちている時だという話を昔からよく聞きます。
この場合はどうなんでしょうか?
また、皮脂の脂肪は食べ物に影響されます。脂肪酸にはいろいろな種類がありますが、皮膚表面で酸化されて問題になりそうなのは、不飽和脂肪酸ではないかと思います。