幹細胞を使って発毛させる

この記事では、毛髪の幹細胞がどこにあるのかということと、毛髪の幹細胞があるのに、なぜ男性型脱毛症が起きるのかということ、そして、男性型脱毛症から再び発毛するようにするにはどうしたらよいのかについて書きます。

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HARG療法から幹細胞に興味をもった

HARG療法の原理を理解するという記事を書いた時に、幹細胞について興味を持ちました。幹細胞は未分化の細胞のことです。

HARG療法は、幹細胞を使うのではなく、脂肪組織から分離・培養した幹細胞から得られる成長因子を使って休止期の毛根を刺激し、毛母細胞が再生し、その後毛包となって毛が生えて来るという方法でした。

脂肪組織に幹細胞があるなら、毛髪周辺に幹細胞はないのだろうかと思いました。実際のところ、幹細胞はありました。

では、幹細胞があるなら、なぜたとえば男性型脱毛症では働いてくれないのだろうか。それを知りたいなと思いました。

幹細胞とはどんな細胞か

幹細胞について幹細胞と再生医療という本を読みました。この本は少し読んだだけでよい本だなと分かります。

幹細胞の定義はこのように書かれていました。

幹細胞は細胞分裂で自己複製して幹細胞自体の数を維持しながら、複数種類の分化した細胞を作り出していく機能を果たす細胞である。

幹細胞は何にでも分化できるというわけではないのです。少し融通はきくけれど、ある程度の役割が決まっている未分化の細胞ということでしょうか。

こんな細胞があるのは、目的があります。

幹細胞はもともと、私たちの臓器や組織を作り出したのちは、その維持や修復のために存在していると考えられる。(中略)表皮や汗腺などを作り維持する表皮幹細胞などが知られており、これらを総称して組織幹細胞あるいは体性幹細胞とよぶ。

これらの組織幹細胞は、作り出すことのできる分化細胞のレパートリーが決まっているだけではなく、細胞分裂で増殖できる程度も限られている。

長い一生には、いろいろなアクシデントがあります。修理するために幹細胞は待機しているのです。どうやら臓器や組織のそばに幹細胞はあるみたいです。

分化する細胞のレパートリーが決まっていて、細胞分裂の回数も制限されているのは、がん化しないためです。未分化の細胞で無制限に分裂するのはがん細胞です。

では、発毛に関係する幹細胞というのはあるのか、あるとしたらどこにあるのか調べてみましょう。

場所について書いていっても分かりにくいので、最初に毛髪の図を載せます。図の中で関係があるのは、毛包、毛球部、毛乳頭、毛母細胞、バルジ、立毛筋です。

毛の構造と毛髪サイクル

ここからの話はおもしろサイエンス薄毛の科学によります。この本は2016年に出版された本なので、新しい話題が書かれています。著者はみな皮膚科の先生です。

毛包は、図にある通り、皮膚内に陥入し、毛根を入れている袋状の上皮性の組織のことです。出典

毛包は、自分自身を部分的に壊しては新しく作り替える「自己再生」をくり返しています。再生するときに毛が抜けます。

成長期毛の毛包の根元はボールのようにふくらんだ形から毛球部と呼ばれています。毛球部には、毛を作るための司令を出す細胞のかたまりである毛乳頭があります。

毛の説明

毛乳頭の上に毛母細胞と呼ばれる非常に増殖する力の高い細胞があり、これらの細胞が毛乳頭からの信号(増殖因子と呼ばれるようなタンパクなど)に反応して盛んに分裂することで毛が作られて伸びて太くなっていきます。毛の成長期です。

しかし、細胞が増殖する力には限界があります。そこで、成長期が数年続くと毛包はこの毛を作るメカニズムの「入れ替え」を行います。

この入れ替え作業では、毛包のちょうど真ん中あたりにある毛を立てる筋肉立毛筋がつくバルジと呼ばれる部分より下の毛包の構造が、あらかじめプログラムされたように細胞死することで短くなります。バルジとは、ふくらみという意味です。

毛包幹細胞はバルジにある

それまで分裂し、毛を作り出していた毛母細胞は一度なくなります。毛乳頭は毛包が短くなるにつれ、皮膚側に引き上げられ、バルジに近づいていきます。

この細胞死のプログラムが終了すると、毛包は「休止期」と呼ばれる状態になります。休止期の長さは2~3ヶ月と推定されています。この時期に毛髪の根元は、私たちが普段目にする抜毛の根元と同じように少しふくらんだ棍棒状になります。

バルジには、毛包のもとになる毛包幹細胞が存在しています。毛包下端の毛乳頭が上にあがってくると、バルジにある毛包幹細胞に近づいて活性化させます。

この刺激で毛包幹細胞が再び目覚め、成長期が始まり、それまで細胞死により失われていた毛包の下部の構造が再生され、新しい毛球部が次の世代の毛を作り出します。

毛包幹細胞は、幹細胞ですから、毛だけではなく、表皮や皮脂腺の細胞にも分化できることが分かっています。

毛包は基本的にはこの「生え替わり」のプロセスを生涯にわたり繰り返します。

毛包幹細胞、色素幹細胞を維持には、毛包幹細胞の他に色素幹細胞についても存在する場所が分かる画像が掲載されています。

毛包は皮膚と同じ外胚葉由来であり、毛包幹細胞も外胚葉由来の細胞です。

一方、毛髪サイクルの指令を出す毛乳頭は、中胚葉由来の細胞からできています。毛包は外胚葉、中胚葉の2つの系統の細胞が互いに作用することで維持されていることになります。

実際、東京理科大学では、2012年に成体毛包由来幹細胞による毛髪再生を実証を発表しています。その解説は、著者インタビュー辻 孝氏:成体毛包由来の幹細胞を用いて毛髪再生を実証で読むことができます。

この実験では、『成体毛包由来の上皮性幹細胞と培養毛乳頭細胞から再生した毛包原基
を皮膚内に移植することにより機能的な毛包を再生可能である』ことが分かりました。上皮性幹細胞はバルジにある毛包幹細胞のことです。

毛乳頭幹細胞はまだ見つかっていない

生涯にわたり再生を繰り返す毛包には、外胚葉と中胚葉由来の2つの幹細胞が存在すると考えられています。

マウスの場合は、マウスの毛包を取り囲む鞘のような中胚葉由来の組織である結合組織の、ちょうど毛乳頭と続いて毛球部を取り囲むカップ状の部分に幹細胞がいるらしいことが分かっています。

しかし、まだヒト毛包から毛乳頭幹細胞は取り出されてはいないようです。

さて、毛包幹細胞と、毛乳頭細胞と、毛包幹細胞がその性質を維持するために適切な環境があれば、発毛できる毛包が再生可能かもしれないところまで話が進みました。

では、男性型脱毛症では、脱毛したあとに再び毛が生えてこないのは、毛乳頭細胞が毛母細胞を刺激できなくなっているということなのでしょうか?

男性型脱毛症では毛包が小さくなっている

男性型脱毛症の本質は、正常な毛髪サイクルに比べて、成長期の長さが数ヶ月から1年程度に短縮してしまうことであると書かれていました。

成長期は、本来、2~6年続くはずのものです。それだけ続けば毛幹(髪の毛)は毛の組織の大きさに比例して太いものになります。

ところが、男性型脱毛症になると、成長期がとても短いために太い毛幹を形成できなくなり、細くて柔らかい毛のまま成長期が終了し、退行期に移り、さらに休止期、そして次の成長期へと移行します。

このステップの中で、短く柔らかい毛が抜けてしまうという現象が起きるのです。

生えても抜けていくので、毛髪サイクルが止まってしまったのかと思います。しかし、実際はその反対で、短い毛髪サイクルを高回転で回っているのです。

このとき、毛包も影響を受け、小さくなっています。毛包の構造自体が失われているわけではないそうです。しかし、こんなことも書かれていました。

ただし、男性型脱毛症が進展した状態で、ツルツルの状態になると、毛の組織の周りが線維の固まりのようになってしまって、しなやかに毛の組織が動けなくなるのです。そうなると、休止期に入った毛の組織が再び大きく変化していけなくなります。

こうなると、毛髪サイクルが結果的に止まった状態になります。

小さくなった毛包をもとに戻すためには

細くなっている毛を太くするには、まず毛包が大きくならないといけません。

毛の太さを決めているのは毛乳頭であると考えられています。(中略)

直接的には、先に述べた毛乳頭細胞の幹細胞のように、毛乳頭の細胞になりやすい細胞を直接ミニチュア化した細胞に組み入れ、毛乳頭のボリュームを増やす方法が考えられます。

間接的には、毛乳頭の細胞に作用する各種の成長因子などを導入することで、毛乳頭を大きくする方法があります。

実際にはこの2つを組み合わせるなどの工夫をしないと、効率的に薄毛は解消されないと思われます。

毛母細胞に指令を出す毛乳頭が、やはり一番重要みたいです。本によると、海外ではこの方法はすでに治験の段階に入っているそうです。

以前、harg療法を調べたときに、脂肪組織由来の幹細胞からのタンパク質を使うと書かれていました。これは中胚葉由来の細胞でした。

毛乳頭細胞も中胚葉由来なので、本文中にあった『毛乳頭の細胞に作用する各種の成長因子などを導入することで、毛乳頭を大きくする』ということに関係があるのかもしれません。

まとめ

私は薬はよく効くので、その反面こわいなと思っています。それで、自分の体細胞を使った再生医療によって発毛できるようになるといいなと思います。

しかし、この記事を書くために初めて幹細胞の本を読みましたが、とても面白いです。

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