20年ぐらい前のことですが、40歳を過ぎたばかりの同僚がリアップを使っていました。彼は、近づくと地肌がうっすら見える程度に薄くなっていました。白髪はなかったです。本人曰く「これがないとどんどん抜けていく」といっていたので、へえー、効果があるんだなあと話を聞いていました。
リアップの主成分であるミノキシジルについて調べてみました。
目次
ミノキシジルとは
ミノキシジルは、日本では大正製薬のリアップという商品になっていることはよく知られています。2002年に掲載されたミノキシジルの発毛作用についてを読むと、日本で1999年に発売されるまでの経緯がよく分かります。
もともとは降圧剤だったことをお忘れなく
発毛のことだけを考えていると軽視しがちですが、ミノキシジルは発毛のための薬ではなく、高血圧の人が飲む、降圧剤だったのです。
発毛薬ミノキシジルの起源はジアリルメラミンである.ジアリルメラミンは1960年頃アップジョン社(現ファルマシア社)が酸分泌阻害薬として開発を試みていた薬物で当初降圧作用はないとされていた.
同社研究員Freyburger は当時珍しかった無麻酔イヌを使うことによって,ジアリルメラミンが降圧作用を持つことを偶然に発見した.それまでジアリルメラミンに降圧作用が見つからなかったのは,4位窒素水酸化体がイヌなどに種特有な活性代謝物として生成されることと,麻酔下では作用が発現しないという薬理特性による.
その後アップジョン社はジアリルメラミン周辺化合物から更に優れた降圧薬物としてミノキシジルを選択した.ミノキシジルの降圧作用はその活性代謝物ミノキシジルサルフェートが血管平滑筋 ATP 感受性 K+チャネル(KATP)を開放することによる.
ミノキシジルは1979年に米国で経口降圧薬として承認され,現在でも薬剤抵抗性の重症患者に最終選択薬として使われている.ミノキシジルの発毛作用は降圧薬臨床試験で副作用として多毛が発現した事から偶然発見された.
アップジョン社はこれを契機にミノキシジルを2% 外用発毛薬として開発し(現在は5% 製剤も承認されている),1988年 FDA に承認された.
日本では1999年に1% 外用剤が発毛薬として一般用医薬品の承認を得て,現在商品名リアップとして発売されている.
開発の経緯を知るのが大切だと思うのは、使用方法を間違えないためです。ミノキシジルは、もともと血圧を下げるために飲む薬だったことを忘れてはいけないと思います。
今でも、薬物抵抗性の重症患者さん、つまり、「薬が効きにくい」患者さんに最終選択薬として使われている。これは、血圧を下げる効き目が強いか、なにか問題が出る可能性がある薬なのでなるべく使わないようにしているのかどちらかだと思います。
外用発毛薬としたのは、内用していると発毛すること以外に、余計な影響があるからだと単純に考えられます。
ミノキシジルの発毛メカニズム
この論文には、ミノキシジルの発毛の本質について書かれていました。
ミノキシジルの発毛効果の本質は成長期期間の延長による矮小化毛包の改善である.その具体的作用として毛乳頭細胞の増殖作用,上皮系毛組織細胞(毛母細胞)のアポトーシス抑制作用,毛組織血流改善作用が考えられる.
毛包は、毛穴より下にある髪の毛を取り囲む組織のこと。髪の毛がつくり育てられていく大切な部分であることはいうまでもありません。
毛乳頭細胞が増殖すると髪が伸び続けます。毛母細胞が自死してしまうの抑えるから毛根がしっかりした期間が長くなりますね。
リアップは、男性型脱毛症に効果が認められる薬として知られています。効果があるからこそ、使用方法はきちんと守らないとならないと思います。
リアップは第一類医薬品
ミノキシジルを成分とするリアップは、ミノキシジル1%配合のものとミノキシジル5%配合のものがありますが、全て第一類医薬品に指定されています。
もちろん、薬局で買えるものですが、その中でも扱いについては厳しく定められています。
第一類医薬品とは、ウイキペディアによると、副作用等により日常生活に支障を来す程度の健康被害が生ずるおそれがある医薬品のうち、特に注意が必要なものや、新規の医薬品。スイッチOTCやダイレクトOTCの大部分が該当する、とあります。
OTCはカウンター越し(over the counter)に売買される意味で、処方箋不要、お店で買える薬の意味です。
リアップは、ダイレクトOTCになります。ダイレクトOTCとは、日本で医療用医薬品としての使用実績がない新有効成分含有医薬品を、そのまま一般用医薬品として販売したもののことをいいます。
第一類医薬品を販売できるのは、薬剤師の常駐する店舗販売業や薬局のみです。薬剤師が、情報提供を購入者に積極的に説明する義務がああります。広告では「この医薬品は、薬剤師から説明を受け、使用上の注意をよく読んでお使いください」と表示されます。
ミノキシジルの副作用
もともとが高血圧を下げる薬で、しつこいですが、「現在でも薬剤抵抗性の重症患者に最終選択薬として使われている」と書かれていた薬です。
副作用はないのでしょうか?
リアップの添付文書ではこのように書かれていました。
使用後、次の症状があらわれた場合は副作用の可能性があるので、直ちに使用を中止し、この説明書を持って医師又は薬剤師に相談してください。
関係部位 症状 皮膚 頭皮の発疹・発赤*、かゆみ、かぶれ、
ふけ、使用部位の熱感等精神神経系 頭痛、気が遠くなる、めまい 循環器 胸の痛み、心拍が速くなる 代謝系 原因のわからない急激な体重増加、手足のむくみ *:頭皮以外にあらわれることもあります。
副作用は、風邪薬でもいろいろ書かれていますから、普段は気にしないのですが、リアップは毎日そして効果を出すには数ヶ月単位で使う薬です。副作用がでるといやですね。
ミノキシジルで副作用が出た人たち
ミノキシジルで得をする人、損をする人~経験者が語る、効果と副作用を読ませていただくと、ミノキシジル5%配合のリアップX5を使っているうちに、頭皮が熱くなり、髪がベタつき、さらに頭皮にかゆみがでて3ヶ月で使用を中止したと書かれていました。
さらに、この方は、飲むミノキシジルタブレットもその後ためしてみましたが、動悸がでて中止されたと書かれていました。とても参考になるサイトです。

調べていくと、大正製薬も厚生省発表「ミノキシジルと動悸・胸痛等について」に関するコメントというニュースを発表したこともあったのですね。
ミノキシジルタブレットはやめよう
ネットの記事を見ていくと、ミノキシジルのタブレットが個人輸入であれば簡単に買えることが分かりました。そして案外と使ってみた人が多いことも分かりました。
しかし、もともとは降圧剤として使用され、しかも、「薬が効きにくい」患者さんに最終選択薬として使われることを考えると、発毛のために安易に飲むのはどうかと思います。
もし、飲んでも安全だと分かれば、大正製薬がとっくに「飲む」リアップを出していると思います。発毛も大切ですが、体が一番大事です。
ミニキシジルタブレットを発毛のために飲むのはやり過ぎだと思います。
ご参考まで
岡嶋研二先生は、髪がみるみる生える、ふえる、きれいになる25の習慣の中でミノキシジルについて次のように書かれています。
私の実験で、ミノキシジルと塩化カルプロニウムには、知覚神経を刺激する作用があることが判明しました。しかし、その刺激作用は、カプサイシンなどにくらべるとかなり弱いことがわかりました。
まとめ
リアップは最初は1%配合、その後、時間をおいて5%配合のものが発売されました。すでにアメリカでは5%配合のものはあったようですが製薬会社も慎重に商品化しています。
ミノキシジルは、もともと高血圧の人が飲む降圧剤で、他の降圧剤が効きにくい患者さんに最終選択薬として使われる薬です。普段、高血圧の薬を飲んでみたいと思う方はいないと思います。
わざわざ外用にして発売しているのは意味があるからです。どうか、この記事を読んでくださった方は、もう少しご自分で深く調べて、発毛のためにミノキシジルのタブレットを飲むことがないようにと思っています。
値段や効果ではなくて、体が一番大事です。