酸素カプセルと聞いて思い出すのは、サッカーのベッカムです。ケガから驚異的な早さで回復したというので、ずいぶん前ですが話題になり日本でも流行りました。
今ではあまり見かけなくなりましたが、腰痛などを治療してもらう治療院に置いてあるのをたまに見かけます。
酸素カプセルは1.3気圧くらいに加圧するので、酸素が血液の中によりたくさん溶けやすくなるのだと思っていました。岡嶋研二先生の血液学の研究グループが偶然見つけた髪を再び生やす新理論 によると、この解釈は半分間違っているのだそうです。
どういうことなのでしょう?
目次
気圧が高くなるとIGF-1が増える
気圧が高い環境に体を置くと、体の調子がよくなったりケガの治癒が早まるのは、IGF-1が急激に増えた結果なのだそうです。
気圧が高くなると、皮膚の小さな動脈の血管は圧迫されて細くなり、血管に加わる圧力が大きくなります。すると、血管を作っている細胞で一酸化窒素(NO)が盛んに作られるようになり、これがプロスタグランジンという物質を増やします。
プロスタグランジンは、血圧を下げたり血栓を予防したりする生理活性物質です。このプロスタグランジンが知覚神経を刺激してIGF-1を増やすのです。
一酸化窒素(NO)とプロスタグランジンの関係がよく分からないので調べてみました。
一酸化窒素(NO)とプロスタグランジン
中野薬房さんの一酸化窒素の説明がとても分かりやすかったです。ありがとうございます。
一酸化窒素(NO)は血管を広げる
一酸化窒素(NO)は、血管の内側で作られます。一酸化窒素(NO)は血管を弛緩させる働きをします。血管が弛緩して拡張されると、血圧が低下し血流は増大します。この作用は動脈だけでなく静脈やリンパ管にも及びます。
狭心症の治療に使われるニトログリセリンは、体内でNOを生産して冠状動脈を拡張し、心筋への血流量を増やす薬です。
なるほど。
プロスタグランジンと一酸化窒素(NO)は共同で働く
血管を拡張する仕組みは、一酸化窒素(NO)とともに、脂肪酸の一種、アラキドン酸から作られるPGI2(プロスタグランジンⅠ2)が深く関わっています。プロスタグランジンは何種類もあり、それぞれ働きが拮抗するように働いています。
育毛に関係して普段食べるものの油について関心のある方は、プロスタグランジンという名前は覚えておいて下さい。いま、あの油はいいけどこの油はよくないという議論には、プロスタグランジンが関係あります。
NOとPGI2は互いに作業を分担したり共同したりして血管の拡張に努めますが、血管が拡張し過ぎるとそこに痛みが生じることがあります。
1.3気圧がIGF-1を増やす
岡嶋先生の研究では、1.3気圧くらいの高気圧でIGF-1が増えることが分かっています。水深3メーターの気圧です。酸素カプセルだと、高酸素タイプといわれる一番気圧が高いタイプですね。
学習能力も上がる?
マウスを1.3気圧の環境に毎日30分ずつ置いて飼育すると、1ヶ月後、脳の記憶に関係ある海馬のIGF-1濃度が、高気圧の環境に入れなかったグループと比べて、2倍に増加していたそうです。
海馬付近のIGF-1濃度が上がると、学習能力が高まります。マウスの水迷路試験を行うと、高気圧にさらしたマウスは明らかに優れていたそうです。
水迷路試験とは、モリスの水迷路に説明が出ていました。
一箇所だけ浅くなっている水槽にラットを泳がせます.ラットは初めはでたらめに泳ぎまわりますが,浅いところに到達するとそこで泳ぎを止めることができます.
しかし,水は不透明になっているので,どこに浅瀬があるのかは,周りの景色から判断しなければなりません.同じテストを何度も繰り返すと,ラットは回りの景色から浅瀬の位置を覚え,浅瀬に到達する時間がだんだん短くなります.
あらかじめ海馬を破壊されたラットは,同様のテストを繰り返しても,浅瀬の位置を覚えることはできません.このような実験から,海馬は「空間における自分の位置」の学習(空間学習)に関与していると考えられています.
岡嶋先生は、実際に、高酸素カプセルで育毛する実験をされていないようですが、知覚神経が刺激され、全身のIGF-1が増えると毛根でもIGF-1が増えて育毛効果があるという理論をもとに書かれたのだと思います。
酸素カプセルに入ったことありますか?
今はそれほど多くないのですが、酸素カプセルに入れてくれるお店はあります。私は興味本位で入ったことがあります。渋谷の東急ハンズ前にあるO2空間です。
90分入りました。寝て入るカプセルなので途中で眠ってしまいました。1.1気圧タイプだったか1.3気圧タイプだったかきっと説明をしてもらったのでしょうが、記憶が定かではありません。かなり頑丈そうな作りでした。
カプセルを閉めると少しずつ加圧して行きます。気圧が高くなっていくと鼓膜が押されて変な感じになるので、ツバを飲み込んで耳抜きをします。事前に説明を受けていましたが、それほど刺激的ではなかったです。
それから先は眠ってしまい、気圧をもとに戻しますといわれて目が覚めました。少し体が温かくなったような感じがしました。
減圧してもどすことをくり返すルーム
そんな話を友人にしたら、もっと変わったところがあると教えてもらいました。吉祥寺にある進盟ルーム吉祥寺というお店です。こちらはカプセルではなくて一度に30人くらい入れる部屋でした。
こちらは高圧でなく、減圧して0.8気圧から1気圧まで50分間いったり来たりをくり返す方式です。
やはり、耳に刺激がありましたが、こちらは減圧するときに涼しくなる感じがして、1気圧に戻すときにはっきりと体が温まる感じがしました。実際に手のひらの温度も上がっていました。入っている間、静脈が太く見えるようになる人もいて、血管に刺激は確かにありそうでした。
まとめ
気圧の変化は育毛に役に立ちそうですが、欠点はお金がかかるところです。家庭では出来ません。競技をやっている方の中には、自宅に酸素カプセルを置いている人もいるようですが、そういう方なら育毛効果が期待できるでしょう。